簡単に言うと、工学から純粋数学へ移るという、
なかなかどうして頭のおかしいことをやったのが
理由です。
でも、ぼくはかなり「準備をして」数学の世界へ飛び込みました。
大学院に入りたての段階で、
基礎知識は博士課程に進むつもりで研究してる友達と比べても
それほど劣るものではなかったかと思います。
でも、今となってみると「数学のやり方」をわかっていなかった。
とくに、大学4年間を数学科で過ごすと''自然''に身につく感覚のようなものがどうやらあるようです。
準備がそれなりにできていて、セミナーなどを順調にこなしたぼくがいざ、
研究の段階に入ると、急に何もできなくなりました。
何かが足りない。
師匠が気づいたのは大学院の4年目(標準は5年)のはじめくらいでした。
共同研究者や周りの人にそれを''補って''もらいながら、
それが何か、わからないままに博士号をもらいました。
きっかけ一つで、論文なんていくらでも書けるようになる
拠り所にしていたアドバイス。
博士号を取った後、どこかで教えるまえに、
ぼくはその何か、きっかけを掴む必要がある。
そう思い、一人で研究をするように心がけていました。
苦労して、失敗して、少しだけその「何か」がつかめた感じがした。
それは、数学がひとりでに動きだしたときでした。
ぼくが間違えても、数学はそれを教えてくれて、正しい方向まで示してくれる、そんな経験。
いま、ケチャップがドバッとでています。
まとまりつつあるものから、まだまだこれからなものまで。
こりゃ、大変だな。
そんな気分です。