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2017年9月3日日曜日

Mini-Workshop on Random links and 3-manifolds、講演メモ1

講演予稿をブログに書いてみるという実験です。
予稿というか、メモです。
4コマ講演するのでそのメモです(詳しくはこちら)。
間違い等の可能性があります。教えてください。
論文を元に講演しますが、1コマ目は自分なりにグロモフ双曲空間についてお話しします。
(著作権が心配になったので1コマ目だけ公開します)

1コマ目:グロモフ双曲空間の復習

  • Quasi geodesic とMorse 補題
  • Tree-like 性質
  • グロモフ積とShadow の定義、基本性質

$(X,d_X)$:距離空間

定義:
  1. $\gamma:I\rightarrow X$ が測地線(geodesic)である$\iff$ $\forall s,t\in I$, $d_X(\gamma(s),\gamma(t)) = |t-s|$.
  2. $\gamma:I\rightarrow X$ が$(Q,c)$- quasi-geodesic (qg)である$\iff$ $\forall s,t\in I$,
    $$\frac{1}{Q}|t-s|-c\leq d_X(\gamma(s),\gamma(t))\leq Q|t-s|+c.$$
  3. $X$ が測地的である。$\iff$ 任意の$x\not=y\in X$ に対して、$x$ と $y$ を結ぶ測地線が存在する。
  4. 測地的な距離空間$X$ がグロモフ双曲的である$\iff$ すべての測地三角形が$\delta$-thin.
Morse 補題: $X$:グロモフ双曲空間
その時 $x,y\in X$に対して、$x,y$を結ぶ任意の二つの$(Q,c)$-qgは互いの$L$近傍に含まれている。$L$ は$Q,c,\delta$ のみできまる($x,y$によらない)。

Tree-like 性質:$X$:グロモフ双曲空間
$\exists K=K(\delta)$ s.t. 任意の4点 $x,y,z,w$ に対して$\exists  T:\text{tree}\subset X$ such that

  • $T$ は4つのvalence 1 の頂点を持ち、その頂点が$x,y,z,w$
  • $d_T$ を$T$上で測った距離とする時、
    \[\forall p,q\in T, d_T(p,q)\leq d_X(p,q)+K\]
グロモフ積:
$x,y,z\in X$ に対して、グロモフ積を
$$(x\cdot y)_z:=\frac{1}{2}(d_X(x,z) + d_X(y,z)-d_X(x,y))$$
で定める。
注:Tree-like 性質よりグロモフ積は測地線[x,y]とz の距離とみなせることがわかる。

グロモフ積の性質:

  • $(x\cdot y)_{x_0} \geq\min\{(x\cdot z)_{x_0}, (y\cdot z)_{x_0}\}$
  • {$x_n$} がグロモフ列$\iff$ $(x_n\cdot x_m)_{x_0}\rightarrow\infty$ as $\min\{m,n\}\rightarrow\infty$.
  • {$x_n$}{$y_n$}がグロモフ同値$\iff$ $(x_n\cdot y_n)_{x_0}\rightarrow\infty$.
  • {グロモフ列}/グロモフ同値をグロモフ境界といい、$\partial_\delta X$ とかく。
  • グロモフ積はグロモフ境界に次のように拡張する。$x,y\in \partial_\delta X$に対し
    $$(x\cdot y)_{x_0}:= \sup\liminf_{m,n\rightarrow\infty}(x_m\cdot y_n)_{x_0}$$
    ここで$\sup$ は点列$\{x_n\}\rightarrow x$, $\{y_n\}\rightarrow y$ すべてについてとる。
Shadow:

$$S_{x_0}(x,R) := \{y\in X:(x\cdot y)_{x_0}\geq d_X(x,x_0) -R\} $$
  • Shadow の補空間もShadow i.e.
    $0\leq R\leq d_X(x,y)$ とする。この時$\exists C>0$ s.t. $X\setminus S_x(y,R)\subset S_y(x,\widetilde R)$.
    ここで$\widetilde R = d_X(x,y)-R + C$.






2017年7月15日土曜日

あいうえお

辞書にはたくさんの言葉が順番にならんでいます。
最初の一文字目を比べて、同じだったら二文字目、・・・
どこかで「先に出てくる」文字があれば、辞書でも先に出てきます。

"先に出てくる"数字は小さいです。
同じように先にでてくる言葉も``小さい''ことにする、

あい<あお<かお・・・

と不等号の記号で書くことができます。

同じことを、「数字のペア」で考えてみます。
$(0,1)<(0,2)<(0,100)<(1,0)$とさっきと同じように
最初の一つ目の座標($(a,b)$なら$a$)を比べて、同じだったら二つ目の数字を比べます。
辞書と同じように決まるので、これを辞書的順序とよんだりします。


この順序をみて、ぼくはとてもしみじみしたのです。

「目の前の壁」を乗り越えていけば、いつかはきっと到達できる。
とくに理由もなくそう思っていたのが"間違い"であると辞書的順序はいうのです。
$(0,0)$ の「目の前の壁」を越えると$(0,1)$。
一万回乗り越えて$(0,10000)$ となっても $(1,0)$ と
$(0,0)$からたった一つ数字を変えたものに絶対に"勝てない"のです。

あいうえお、なら大丈夫。
おわり、があるから、いつかは"繰り上がる"。
でも数字は無限個あって、おわりがないのです。
だから、"そのまま"では、
絶対にたどり着けない場所が、
生まれてしまうのです。

なんとなく、目の前のことに追われて
「頑張ってるつもり」になること。
本当はこのままではいけないと思っているのに、
"少し前に進む" からなんとなく続けていること。
それらは決して目標へ続く道へとはならない、
そんなことがあるのだと知りました。

二つの数字のペアを考えたから"上の"座標は一つでした。
でももしかしたら、10個、100個、もしかしたら無限個、座標があるかもしれません。

努力は正しい方向に向けないといけないのだと、辞書的順序に教わったのです。

新しい理論を学ぶと、身近なことが新しい目で見える、初めての経験でもありました。

あいうえお。

2017年6月10日土曜日

忘れた幾何

「幾何」とはきっちりかっちり決まった"かたち"です。
トポロジーは形の「幾何」、長さ、角度、面積などの量的な情報、を捨てて
 残ったものをしらべよう。
 そんな考え方でした (昔の記事、「1+1と2」もよければ)。

 そうやって、たくさんの情報を捨ててもなお、残ったなにかがあるならば
 それはきっと大切だろう。

 数学ではいくらでも高い次元の空間を考えることができます。
 でも、不思議なことに"低次元"とよばれる
 2次元、3次元の空間のトポロジーが「面白い」。
(「 次元の低い話」はトポロジーでは面白い話です)

その面白さのうち、ぼくが好きな理由が「幾何化」です。
トポロジーは幾何を忘れていた。
だけれども、低次元のトポロジーは自分に合った、
とてもきれいな「幾何」を決めるのです。

例えば球面(ボールの表面です)。
これは2次元の空間。
トポロジーではいくらでも"ぐにゃぐにゃ"変形して良いのですが、
球面が好きなのは、一番最初に思い浮かぶ「まるい」幾何。

他にいかようにでも幾何をいれることができますが
"ほおっておくと"まるくなるのが球面です。
空間のきらいな幾何を入れると、「空間がかわいそう」という先生もいます。

2次元の空間はみな、好きな幾何を持っている、
つまり「幾何化」できるということが古くから知られていました。

そして、「幾何化」はサーストンにより3次元でもできると予想され
ペレルマンによって証明されました。
ポアンカレ予想という100年以上未解決だった予想とともに。

3次元の空間も「好きな幾何」を持っているということが証明されたのです。
その中で、とても自然で、きれいな幾何になることが知られているのが、
3次元の双曲幾何、「またまたまがる」幾何です。

この幾何はなんと、トポロジーでただ一つに決まります。
トポロジーが幾何を決めるのです。
つまり、
「幾何を忘れて」形の本質にせまったトポロジーを、
「幾何を使って」研究できるのです。

一度忘れて、辿り着いた先に、そっときれいな形で、「幾何」がいるのです。
双曲幾何はとても強力で、見つけることができれば、空間の様々な性質がわかります。

では、どうやって見つけるのか?
「存在すること」の証明と、実際に見つけることには大きな差があります。

実は、それをやってくれるプログラムがあります。
 SnapPea という名前のそのプログラムは近似計算で双曲幾何を計算できます。
とても面白く、様々な研究者がそれを使ってきました。
SnapPea でたくさんの双曲幾何を"もちそうに"みえる面白そうな空間が見つかりました。

ただ、数学者というのは面倒くさい生き物でもあって、
「近似計算」では証明とはみなさないのです。

じゃあどうするか?
そう、ぼくの博士論文の結果を使うのです!(笑)

精度保証計算というものをつかって
SnapPea を、数学者も「証明している」と、
まぁ納得してもらえる形にしたのが、ぼくの博士論文です。

「SnapPea の弱点を君が補ってくれた」

SnapPea の開発者にあって、気分がのって長々書いてしまいました。
トポロジーと幾何は互いに補い合って、低次元の空間を豊かにしているのです。
たくさんの共同研究者の協力もあって、ちょっといいもの作れましたという話でした。