2017年9月30日土曜日

レーゲンズブルク2

このまちは、歴史にあふれている。
少し昔の、そのまた少し昔くらいの時代、
レーゲンズブルクはとても大事なまちで
いまは、まちごと世界遺産。

ぼくにとって初めて来るドイツの田舎町であり、
他のまちのことは知らないのだけど
このまちの「かんかく」が好き。

建物と建物のかんかく
まち行く人との程よいかんかく

歩いて大学に向かう途中、ハトがいて
おっきい葉っぱが足にくっついて
ちょっと大変そうにテコテコ歩いていた。

ぼくと、きっとお散歩中のおじいさんは
一緒のタイミングでそのハトを見つけて、
しばらくハトを見て、そのあと目があって
ふたりで一緒に笑った。

目があった瞬間、きっと共通の言語がないと互いに察した。
でも、目の前でおきてる
ちょっぴりおかしい出来事をちゃんと分かり合えた。


普通に食事をしていると、
となりのひとが

「おいしいかい?」

と話しかけてくる。

こんなのただ笑顔が増えるだけなのに
なんでいままであんまり経験なかったんだろう。

レーゲンズブルク
よい、かんかくのまちです。

きっともう少し、つづく。

2017年9月23日土曜日

レーゲンズブルク1

ドイツのレーゲンズブルクという街に来ています。
海外にいるので普通の日記を書いてみます。

今回は(お金がなくて)タイ航空を使ってみました。
チキンカレーライス、と言われて出てきた機内食が
タイ料理感満載でよかった。
タイ料理好きなのでタイ航空はなかなかよいです。

バンコク経由で来ましたが、
意外と経由地があったほうが時差ぼけが楽なのかもしれない。
いつもより元気です。

ミュンヘン空港では電車などの関係でちょっとした待ち時間。
Info ゾーンで「暇なんだけど、どうしたらいいですかね?」と
聞いたら、お姉さんに困った顔をされました。
すると、隣にいた、のちにルーマニア在住、国籍ハンガリーとわかる兄さんに
「おれもトランジットでひま!」
と言われていろいろお話ししました。

ルーマニアの教育や経済状況、政治など色々な話を聞きました。
先生の給料がすごく少なく、ほとんどが実家暮らしであるとか
才能や、やる気のある子供にチャンスがなくてもったいないとか
その昔、ルーマニアという国がどれだけ大変だったかとか
いろいろ話してくれました。

聞くと、大学院まで物理を学んでいたそうで
数学をやっていると言うと

なんとなく似た匂いがしたよ

といって笑っていました。

数学者として、宇宙の始まり、ビッグバンの理論についてどうおもうか?
そう聞かれて、よく知らないけど信じてるよ、というと
「おれは信じてない!」
と怒られました。


彼はミュンヘンからサンフランシスコへ行くと言っていました。
いまはITエンジニアでルーマニアの中では給料がいいそう。
ルーマニアが好きで、
いろいろ学んで持ち帰ってやろう
そんな気迫が見え隠れしてました。

楽しいおしゃべりのおかげで時間はあっという間でした。
時間が来て、お別れをした後は
電車でレーゲンズブルクに。
ヨーロッパの電車移動は風景が見れていいですね。

そうしてようやく宿にたどり着きました。

つづく、たぶん。

2017年9月16日土曜日

でも

とある週末、ストリートジャズフェスティバルということで
商店街が音楽にあふれていました。

音楽を聴くのは楽しく、また
楽しそうにジャズを生み出す人たちをみるのは
心地よい。

ふと、自分は小さい頃から、歌うこと、
演奏することが苦手であったことを思い出す。

でも、音楽は好き。


数学やってます。
そういうと、数学は苦手でした、と返ってきたり
へぇと微妙な顔をされたりします。

そんな人たちも、苦手で、ちょっと嫌だったけど
数学もおもしろいな。
そう思ってもらえるために、なにができるのか、
少し考えました。


みんながみんな、数学がおもしろいと思う世界。
それはそれで、変な感じ。


自分も中学高校の数学はあんまり好きでなかったり。


とりあえず、数学をやってるらしいあいつは
なんだか楽しそうだと
思ってもらえるように、なろうと思いました。

2017年9月9日土曜日

記憶

よく、匂いは記憶と強く繋がっているという話を聞きます。
たしかに、ふとした匂いで
様々な記憶が思い出されることがあります。

同じように、ぼくは数学で記憶が蘇ることがよくあります。
むかし、自分でやった証明を思い出すと、
それを、いつ、どこで、どんなことを感じながら証明したか
一気に頭に浮かんだりします。

あぁ、この議論、海外でお散歩している時に考えたな。
その時の景色が目の前に広がります。

つらいことがあったときに学んだ数学をみて、
それを思い出してしまったりもします。

そのうち書こうと思っていますが、
ぼくにとって集中は
「周りの情報が遮断される」
状態ではなく、むしろ
「たくさんの情報が踊るようにあたまをめぐる」
ような感覚に近いというのが関係するのかもしれません。


いろいろな思い出をとりだすきっかけとなる
ぼくにとって大事な数学たち。

アルバムのようにきちんと
とっておきたいです。

2017年9月3日日曜日

Mini-Workshop on Random links and 3-manifolds、講演メモ1

講演予稿をブログに書いてみるという実験です。
予稿というか、メモです。
4コマ講演するのでそのメモです(詳しくはこちら)。
間違い等の可能性があります。教えてください。
論文を元に講演しますが、1コマ目は自分なりにグロモフ双曲空間についてお話しします。
(著作権が心配になったので1コマ目だけ公開します)

1コマ目:グロモフ双曲空間の復習

  • Quasi geodesic とMorse 補題
  • Tree-like 性質
  • グロモフ積とShadow の定義、基本性質

$(X,d_X)$:距離空間

定義:
  1. $\gamma:I\rightarrow X$ が測地線(geodesic)である$\iff$ $\forall s,t\in I$, $d_X(\gamma(s),\gamma(t)) = |t-s|$.
  2. $\gamma:I\rightarrow X$ が$(Q,c)$- quasi-geodesic (qg)である$\iff$ $\forall s,t\in I$,
    $$\frac{1}{Q}|t-s|-c\leq d_X(\gamma(s),\gamma(t))\leq Q|t-s|+c.$$
  3. $X$ が測地的である。$\iff$ 任意の$x\not=y\in X$ に対して、$x$ と $y$ を結ぶ測地線が存在する。
  4. 測地的な距離空間$X$ がグロモフ双曲的である$\iff$ すべての測地三角形が$\delta$-thin.
Morse 補題: $X$:グロモフ双曲空間
その時 $x,y\in X$に対して、$x,y$を結ぶ任意の二つの$(Q,c)$-qgは互いの$L$近傍に含まれている。$L$ は$Q,c,\delta$ のみできまる($x,y$によらない)。

Tree-like 性質:$X$:グロモフ双曲空間
$\exists K=K(\delta)$ s.t. 任意の4点 $x,y,z,w$ に対して$\exists  T:\text{tree}\subset X$ such that

  • $T$ は4つのvalence 1 の頂点を持ち、その頂点が$x,y,z,w$
  • $d_T$ を$T$上で測った距離とする時、
    \[\forall p,q\in T, d_T(p,q)\leq d_X(p,q)+K\]
グロモフ積:
$x,y,z\in X$ に対して、グロモフ積を
$$(x\cdot y)_z:=\frac{1}{2}(d_X(x,z) + d_X(y,z)-d_X(x,y))$$
で定める。
注:Tree-like 性質よりグロモフ積は測地線[x,y]とz の距離とみなせることがわかる。

グロモフ積の性質:

  • $(x\cdot y)_{x_0} \geq\min\{(x\cdot z)_{x_0}, (y\cdot z)_{x_0}\}$
  • {$x_n$} がグロモフ列$\iff$ $(x_n\cdot x_m)_{x_0}\rightarrow\infty$ as $\min\{m,n\}\rightarrow\infty$.
  • {$x_n$}{$y_n$}がグロモフ同値$\iff$ $(x_n\cdot y_n)_{x_0}\rightarrow\infty$.
  • {グロモフ列}/グロモフ同値をグロモフ境界といい、$\partial_\delta X$ とかく。
  • グロモフ積はグロモフ境界に次のように拡張する。$x,y\in \partial_\delta X$に対し
    $$(x\cdot y)_{x_0}:= \sup\liminf_{m,n\rightarrow\infty}(x_m\cdot y_n)_{x_0}$$
    ここで$\sup$ は点列$\{x_n\}\rightarrow x$, $\{y_n\}\rightarrow y$ すべてについてとる。
Shadow:

$$S_{x_0}(x,R) := \{y\in X:(x\cdot y)_{x_0}\geq d_X(x,x_0) -R\} $$
  • Shadow の補空間もShadow i.e.
    $0\leq R\leq d_X(x,y)$ とする。この時$\exists C>0$ s.t. $X\setminus S_x(y,R)\subset S_y(x,\widetilde R)$.
    ここで$\widetilde R = d_X(x,y)-R + C$.