夏目漱石、草枕。
「山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい。」
最近ずっと好きで、事あるごとに思い返しているのだけど
すごいなと、今更ながらに感心している。
世の中のいろいろな問題を考えるときに、
いつも、論理と感情を分けて考えている。
論理で考えている人と
感情で考えている人が
議論と言う名の口論をしている場面をよく見かける。
始まりの条件が違うのだ。
同じ人が考えても全く別の結論が出るだろう。
論理をルールに物事を考えると、得てして、とても辛辣な結論に達する。
論理はその刃で少しの人が傷つくことを、多くの人の福祉のために肯定する。
感情をルールに物事を考えると、綺麗な答えの後ろに、
たくさんの「気遣い、やさしさ」という無理が隠れる。
その無理の積み重ねによる悲劇を幾度も見聞きした。
全く難しいなと、思う。
そんな風に、いろいろと、ものを考えていると
ときに、とても強い信念を得て、大事にしたいと思ってしまう。
すると、その信念にそぐわない、いろいろに
強い反感を覚えて、許せなくなったりする。
進むことも戻ることも右左に折れることもできずに、
信念にがんじがらめにされてしまう。
もう、本当に難しいな。
そうして、こんな思考が頭をもたげるのは
旅をしている時が多い。
なるほどな、と思うのです。
「山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい。」