2019年8月10日土曜日

草枕

夏目漱石、草枕。

「山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい。」

最近ずっと好きで、事あるごとに思い返しているのだけど
すごいなと、今更ながらに感心している。

世の中のいろいろな問題を考えるときに、
いつも、論理と感情を分けて考えている。

論理で考えている人と
感情で考えている人が
議論と言う名の口論をしている場面をよく見かける。

始まりの条件が違うのだ。
同じ人が考えても全く別の結論が出るだろう。

論理をルールに物事を考えると、得てして、とても辛辣な結論に達する。
論理はその刃で少しの人が傷つくことを、多くの人の福祉のために肯定する。
感情をルールに物事を考えると、綺麗な答えの後ろに、
たくさんの「気遣い、やさしさ」という無理が隠れる。
その無理の積み重ねによる悲劇を幾度も見聞きした。

全く難しいなと、思う。
そんな風に、いろいろと、ものを考えていると
ときに、とても強い信念を得て、大事にしたいと思ってしまう。
すると、その信念にそぐわない、いろいろに
強い反感を覚えて、許せなくなったりする。
進むことも戻ることも右左に折れることもできずに、
信念にがんじがらめにされてしまう。

もう、本当に難しいな。
そうして、こんな思考が頭をもたげるのは
旅をしている時が多い。

なるほどな、と思うのです。

「山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい。」