何もない町だ。
いや、昔はもう少し、あったのかなと思わせる、
名残だけがある町だ。
ここでは特に目的はない。
ただ、この地に泊まってみたかった。
何の気なしに選んだ宿は創業120年だった。
大きなホテル。
ここにそんなに人は来るのだろうか。
失礼かな。
僕には、この宿も名残にみえた。
何か見るものはないかと地図を眺める。
うーむ、何もない。
もっとじっくり広く眺めてみると
1時間ほど歩いた先に温泉があった。
昨日から随分と涼しい。
この気温ならよろしいでしょう。
歩いてみることにした。
町をみにきたのだ。歩くのは良い。
土地柄だろうか、隙間が広い。道路も広い。
そんなことを思っていたら
すぐに、田畑に囲まれるようになった。
路地販売で美味しそうな野菜が売っている。
とうもろこしが欲しかったけれど、さすがにどうしようもないので
しばし眺めて、諦めた。
歩くに連れて、太陽がだんだんと本気をだしてきた。
今まで雲に隠れていた彼は、この北の地でも輝いている。
暑い。暑い。
なんとか温泉まで、たどりつく。
温泉に入る準備、万端である。
思いつきで来てみたけれど、
ゆかりの地で湧く温泉に入るだなんて素敵でないか。
わくわくした。