2017年11月25日土曜日

研究者の声

大学の研究所のホームページに「研究者の声」というページがありまして、
そこにぼくの書いた、今いる研究所での研究の魅力を載せていただきました。
英語のページもありまして、はじめて
自分で書いた日本語を人の手で英語にされる
という体験をしました。

日本語を読んでいただくと、もしかしたら分かってもらえるかもしれませんが
英訳、難しいだろうな、と思ってました。
どうにも難しかったようで、申し訳ないと感じつつも
結局ほとんど、自分で直した英語です。

当たり前かもしれないけれど、言葉にするということは
頭の中にある名前のないアイデアとか、考えとかに
名前をつけていく作業であると思いました。
一つの言語で書いた言葉は、その言語の背景なども鑑みて得た表現であって
それだけが正解ではない。
それを''直訳''されると、やっぱり違和感がありました。

一つの概念が色々な理論から理解できて、より一層その概念の理解が深まる。
数学でよくある、そんなことを思ったりしました。

自由に書いてください!
と、自由人のぼくに依頼するなかなか自由な仕事でした。
もともと「ジャグリングの中の数学」というタイトルでやった
一般向け講演を気に入ってもらえたのがきっかけということあって、
ジャグリングをしているところを撮影させてください!
といわれたので、ジャグリングしている写真ですが、
結果として、なぜジャグリングしているかわからない
文章になりました。
よろしければどうぞ(ぼくは二人目の日本人です。)
日本語:http://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/jp/about/staff/voice.html
英語:http://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/en/about/staff/voice.html

2017年11月18日土曜日

数学と工学2

続きです。(数学と工学1はこちら

「わからない」ことが「おもしろい」につながったのはラッキーでした。
ひとつ、きっかけは囲碁やスポーツ
囲碁は基本的に「わからない」。
最近のAI の発展で明らかになったことは
トッププロでさえ囲碁を「わかって」いなかったということ。
だからこそ、おもしろい。
スポーツもどんなトレーニングをすれば強くなれるのか、
わからないことが多い。
高校時代、囲碁やスポーツに夢中になって、「それでもわかりたい」と
試行錯誤したのが、それはもう、楽しかった。
たくさん調べて、納得がいかないところは自分で考えたりした。
その道へはすすめなかったけれど、
「こうやって生きていけたら」となんども思っていた。

そしてもうひとつ、それでも、授業で教えられているということは
きっと頑張ればわかるんだろうということ。
幸運は重なって、日本は(英語圏以外で)世界的にみてもめずらしい
「母国語で書かれた大学レベルの本」
が多種多様にある場所だったのです。

数学の本を手に取り、どこかで聞いたか読んだか、
こんな勉強をしました。

まず定理を理解して、定理の主張だけを書いた紙を作る。
次の日、定理の主張だけ書いた紙だけをみて証明を自分で考える。
終わってから先に進む、もちろん主張だけ書いた紙を作りながら。

日々、繰り返しました。
囲碁を勉強していた時、プロの対局を一度碁盤に並べて、
少し経ったあと、何も見ないで並べ直す。
そんなことを高校時代やっていたことを思い出していました。
そして、うまく並べられないところは、理解できていないところ。

数学も全く同じでした。(この勉強法、とてもオススメです)
少しずつ、授業がわかるようになっていきました。
もしかしたら、むかし、追い求めていた生き方が、
数学をやればできるんじゃないか。

期待で気合も乗ってきていました。

(どうしよう、たぶんこれ結構)つづく

2017年11月11日土曜日

数学と工学1

少しだけ、昔を思い出しています。
よく聞かれる質問
「どうして工学から数学、トポロジーへ専門を変えたのか?」

工学に飽きちゃったんですよ
数学が面白くて

いろいろ適当にごまかしてきました。
工学から数学。ほとんどのおとなが「やめておいた方が良い」といった転向。
理由はたくさんありました。
すごく大事だったはずなのに、油断すると忘れそうになるのでちょっと書いてみます。
きっといろいろ書きたくなるのでタイトルに「1」をつけました。

大学時代、まぁいろいろありまして、1年ヒマになりました。
がんばれば前に進めたけれど、そっちが本当に''前''なのかよくわからなかったので
1年のんびりしようと思ったのです。
大学というのは楽しい場所で、やろうと思えばいろいろな学科の授業に潜り込めます。
ぼくは工学部でしたが、情報学部とか中国語とか、ほかにも
体育専門の授業で

オリンピックのメダリストがただ自慢するだけの授業、とか
ひたすらサッカーの試合や歴史をみるだけの授業、とか

いろいろ潜り込みました。
経営学部の

歴代、売れたキャッチコピー

みたいな授業もよかったです。
芸術専門の授業とかにも行けばよかったな、と今は思ってます。
(全ての学科が1つのキャンパスにある筑波大学、すばらしい)

その中で、ちょっと興味を持って潜り込んでみたのが
数学科の「トポロジー入門」
という授業でした。
グラフ理論という工学部でもやる分野がありまして、
それがなにやら''トポロジー''なる分野の一つと聞いて。

いろいろな授業はひょっこり潜り込んでも
なんだかんだでちょっとはわかる部分がありました。

この「トポロジー入門」を除いて。
最初の一言目から、意味がわからない。

後になってわかるのですが
「トポロジー入門」は3年生向けの授業で
「集合と位相」という授業を1年、学んでいる前提でした。
そして数学は積み重ねの学問なのでした。

黒板に書いてある記号すら、理解できない。
授業一コマ、呪文を聞いているようでした。

普通はあきらめるのかもしれませんが、
ぼくは、ヒマだったので・・・

おもしれぇ。

ちょっと頑張ることにしたのです。

つづく。

2017年11月4日土曜日

かわ

数学をみていて、あぁ、ここには大きな川が流れているなぁと感じることがあります。
議論に器の大きさがあって、舟を浮かべるだけで、どんどんすすんでゆく。

大きな川のまわりには町ができる。
川がいろいろなものを運んでくれるから、
それを利用しようと人々があつまる。

昔、タイ人の友達に、
なんでタイはそんなにご飯が美味しいのか?
と聞いたら
「大きな川があったからさ」
と言われた。
いろいろな国のよい食文化が''流れて''きたのだそう。

大きな川は、少し水を横に流しても、少々せき止めてしまっても
変わらず、ゆったり、けれどもたくさん、運んでくれる。

最近、自分でやったお気に入りの一つは、
そんな大きな川に乗った感じの数学でした。

ほんとは、まだ見つかっていない
隠れた大きな川を
いつか見つけてみたいなと思っています。