2019年6月29日土曜日

タノシイ

工学部卒で真っ当な数学教育を受けていない僕は、
教える側になって初めて系統だって一年生の数学を見ている。
すると、専門から少し離れた数学の講演を
より楽しめるようになった。
これまで楽しめなかったのは、ただ知らなかっただけらしい。
役に立つとか、生きていけるとか
人は色々言うけれど
見て、触れて。
面白い、楽しいと思えるものが増える。

学ぶ理由なんて、これで十分だと思うんだよな。

2019年6月23日日曜日

いつかの結び目

トポロジーの話。今度の講演のメモ書きである。
ボールの軌道を追いかけることによって組みひもを作る話をする。
トポロジーの説明は1年前の動画(これ)をみてもらうことにして
その先の話。

人と人との関わりは、組みひものようだと思っている。
もちろん礼儀は大事だけれど、多少の"ゆれ"はそこまで関係性を大きく変えない。
積み重なって大きなわだかまりになることはあっても
一つ二つの失礼、失言はなんだかんだで、その後がしっかりしていれば
関係性を大きく変えることはない。
組みひもを多少揺らしても、交わることがなく
トポロジーが変わらないのによく似ている。

けれど、例えば

相手が本当に困っている時
助けてあげられるか。

追いかけたい夢ができた時
それをお世話になっている人に伝えられるか。

本気の思いを、相手に伝えられるか。

これが、組みひもの「絡まり」を、きっと変える。
トポロジーが、変わる。

思えば、ずっとランダムな絡まりを研究してきた。
人と人との交わりは、組みひもを形成していくとして、
その絡まりかたは、成り行きに任せるだけなら
きっとランダムであろうと思う。
偶然が積み重なって
そうやって、人と人との関わりが生まれていく。

わかっていることは、過去にできた結び目は
成り行きに任せていたら
ランダムに組みひもを絡ませていたら
ほぼ間違いなく、解けないこと。

それを解こうと思ったら、時間が経てば経つほど
大きな努力がいること。

多くの場合は、とてもとても解けず
諦めるしかないこと。

話は飛躍するけれど、
死は、そんな複雑になった絡まりを解く、
大きな視点では大切なものだと思っている。

結局、ほとんどの場合、
今、ここ
でしか組みひものトポロジーは変えられない。

本気を見せる、その前に必要なさまざまな障害を乗り越える時の、ゆれは、
やる前は大きなものに見えるのだけど、
やってみると、そうでもない。
トポロジーはきっと変わらない。

でも、その本気を誰にも見せずに、
伝えずに、行動せずに、隠してしまうと
トポロジーを、変えてしまう。

そんな風にトポロジーを変えてしまうと
いつか、後になって気づく。
そこに嫌な絡まりがあることに。
それは、解けないことに。

実を言うと、そんな勇気を持って見せつけた本気のそれは
そう遠くない未来に、大事でなくなったりもする。

それでもいいから。
動いて、伝えて、見せつけて欲しい。

大人は色々なことをいうけれど、
結局、人は、自分が見てきた世界のことしか、知らない。

今、この瞬間にある想いは、たくさんの大人の"これまで"より
ずっと、本物だ。
だけど、本物であればあるほど
価値があればあるほど、
伝えないと、表に出さないと
明日にはなくなってしまうかもしれない
たぶん、そう言うものなんだと思う。

見せつけて、その後大事でなくなってしまうのと
隠して消えてしまうことは
似ているようで、違う。

上から見ると、一周回って同じ場所にいるようで
横から見ると、一段、違う。

高校生の時、結局僕は、ぶつけた本気の道へは進まなかった。
ずっと、解けない、嫌な絡み目を感じていた。
だから、大学生の時、
僕は、絶対に譲らないと、覚悟ができた。

そんな感じ。

テンション上がって色々書いてしまった。
ここから、搾って、ジュースにします。

2019年6月15日土曜日

出張講義

今度、高校に出張して講義をすることになった。
それに向けて書いた講義紹介の文章を(自分が)気に入ったので
こっそりここに書いておきます。

タイトル

「ジャグリングの"かたち"」
テーマ
「かたち」を理解したい。そう思った時、最初に考えつくのは長さや面積を測ってみることです。きっとたくさん学校でも勉強しますね。でも、もう少し、ゆったり、考えてみてみると? 一つ一つ、長さや大きさは違っていても、木はみんな「木のかたち」をしているし、ドーナッツもみんな「ドーナッツのかたち」をしています。こんな感覚をことばにする、一つの方法にトポロジーという数学があります。この講演では、トポロジーを使って、ジャグリングの色々なワザの「かたち」を理解していきます。きっと、「かたち」という考え方に新しい視点が得られるはず。もしかしたら、「家族のかたち」とか「愛のかたち」とかも、わかる、かも?しれません??

とりあえず、楽しみです。





2019年6月8日土曜日

余計なこと

金沢から東京まで付き添って、ようやくひと段落 彼は深夜の便で帰っていく。 最後はラーメンを食べた。 思い返すと二週間、ほぼ毎日、昼夜と一緒にご飯を食べ 数学だけでなく、色々な話をした。 大変だったけど、楽しかった。 いまは、少しさみしい。 余計なこともたくさん考えた、よい二週間だった。

文字数の関係でかけなかった、"余計なこと"を
書こうかとも思ったけれど、書かない方がよい気もしている。

とにかく、今、この瞬間は二度と戻らないことを
強く意識した二週間だった。

2019年6月1日土曜日

That's intelligent

海外からお客さんがきている。
僕から見ると、彼は「日本が好きな天才」で
日本に来るきっかけに、
僕と話をしてもいいと思ってくれているのだろうと
思っている。

何か僕が提案をしても
That's a good idea.
と言いつつ、即座にその上をいかれるばかりだった。

研究、学習をする時、何かに話しかけるといいと言われている。
お人形に話しかけると言うのは(見た目はかなり奇怪だが)
すごく良い研究方法だと言う。

僕の役割は、ちょっと数学の話ができる人形だった。
最初は、人形だし、他にやりたいこともあるし
それなり、でやるかと思っていた。

でも、気づいた。
これが、ものすごく貴重な機会であることに。
もしかしたら、彼とこんなにじっくり話せる機会は最後かもしれないことに。
そう思って、死ぬ気でやる決意をした。
色々なものを放り出して、全力でやった。
今週の授業では、毎回何かしらを忘れたり、やらかしたりした。
ごめん。

彼と2年前からずっと考えている問題がある。
彼から大量の情報を叩き込まれ、疲れて寝て、起きた朝、僕は発見をした。
問題が進んだ。
彼は初めて
That's intelligent.
と言った。
とても褒められた感がある。嬉しい。

きっと後少しだ。
彼は後一週間滞在する。
やりきる。やりきるんだ。