2019年8月31日土曜日

しか

ただいま、急ブレーキをかけましたが
しかが、線路に立ち入ったためです。
しかが、無事に立ち去ったため、変わらず運行してまいります。

一日かけて、電車で移動。
この先、雨で運休の可能性があるなんて、そんなわけないでしょう。
これぞ、快晴。山沿いを抜けて、しかとすれ違い、海沿いへ。

長旅なので、思考のタネをいくつか頭に仕込んできたのだけれど
まあまあ、そんなことを言わずに、景色でもみておいでなさいよ。
窓の外から声が聞こえるような、雄大さ。

そこまで言うなら、そう致しましょう。
北へ向かう予定で、お昼過ぎの列車だったので
進行方向右側の窓際にすわる。
これで、日差しを気にせず、窓の外をみることができる。
完璧だ。
あれれ。
日差しが差し込んでくる。

そんなバカな。地図を広げて停車駅と見比べる。
なるほど、海外線に沿って、ぐるっと回って
端まで行って、もいちど回って北へ行くのですか。

到着予定時刻を見ると、そんなに長い時間でなさそうなので
日差しをあびながら、海を眺める。

うーみーはひろーいなー、おおきーいなー。

全く何のひねりもない歌だ。
なのに、どうして、やっぱり、こう言わさるのか。

海は広い、大きい。

その海を貫くトンネルを抜けて、やってきた。
昔を想像して、感動もした。
思考の後に、シンプルを見ると、
なんだか深い気がしてしまうのは、どうしてなのだろう。

まあ、いいか。気のせいかもしれないけれど
なんか、深いものをみた気がするというのは
結構気分のいいもんだ。

しばらくして、乗り換え地点にたどり着く。
件の、運休の可能性があった列車は、元気に走っていた。

いやいや、助かりました。
乗り換えをしたあとは、1時間ほどで目的地。
これまでの旅を思えばあっという間。

目的地にたどり着くと。あらま、寒い。
東京は酷暑でヒーヒー行ってるらしいのに、寒い。

これも一興、真夏の寒さを肌に教えてみてみましょう。
本日は、この地に一泊。明日は先輩のお祝いだ。

2019年8月24日土曜日

つらぬく

美人の町に別れを告げて
りんごの町へ向かう。

りんごの町では一泊するだけで
すぐに、さらにさらに、北へゆく。

さすがは、りんごの町。
朝ごはんにでてきたりんごジュースが
おいしい。それはもう、おいしい。

りんごの町に早々に別れを告げて、北へ。
名のあるトンネルを通る。

車内で、観光案内。
このトンネルは全長53.8km、一番深いところでは海底240mを通ります。
40年の地質調査を経て、1988年に開通いたしました。

録音ではないのに。淀みない、綺麗な音のアナウンス。
きっと、車掌さんも、好きなんだな。

ちょっとだけ想像した。
トンネルがなかった時代のことを。
ここに、トンネルを通してやろうと志した人々のことを。
技術も、気力も、きっと全部ぶちこんで
海に、一本の長い穴を貫いた、その瞬間のことを。

昔にばっかり浪漫を感じるのは、僕の悪い癖だ。
まあ、僕だけでなく、どうやら人は、そういうものらしい。
トンネルそのものは、
うみの底に沈んでいることなど微塵も感じさせず
いたって普通のトンネルであった。

すごいことを、いたって普通と感じさせることが
一番すごいんだよな。

目的地は決まっているのだけれど、
道中は何も決めていない。
トンネルの先の駅で、1時間ほど待ちぼうけ。
観光案内のお姉さんに、尋ねる。
近くに何か見るものはありますか。
この辺りは、何もありません。
あらまあ。

仕方ないので、駅の外に出てみると
思いもよらない、ぼくの好きなものがあった。
そこには、何にもない、があった。

いえいえ、田んぼと畑がありました。
少し行くと、ふつうに馬がいました。
田んぼにたくさん人がいるなと思ったら
かかしでした。
大きな鳥がたくさん飛んでいるなと思ったら
かかしでした。

大いに楽しんで駅に戻る。
この旅はとても天気に恵まれているのだけれど
どうやら、ぼくの前後ろでは雨が降っているらしい。
とくに、前。

みどりの窓口で、お姉さんに教わります。
大雨で、電車、運休かもしれません。

あらあら、雲行きが怪しくなってまいりました。
ともかく、行けるところまで、ゆきましょう。

2019年8月17日土曜日

たび、たび

駅に着くと、困った。列車に空席がない。
掲示板には、ばってん、ばってん。
仕方なく、立席。といっても、立席は、すき。

立席は、すいてた。
デッキを独り占め。

本当に誰もいないから
鼻歌なんか、歌ちゃったりして。
らんらるら。

ときおり、人がデッキに出てきて、きょろきょろ。
ゴミ箱の場所がわかりづらい。

ここですよー。
あら、あら、ありがとう。

途中で、路線の空気が変わる。
ゆったり、ゆったり、ゆるりるり。
相変わらずデッキに立っていたら
車掌さんがやってくる。
ここから先は、ご自由にお座りください。
おお、ラッキー。

やっぱり座れると快適である。
列車は山道を進み、進む。

トンネル、断崖、トンネル、断崖。
途中から
水田、水田、休憩中の水田、水田。

まもなく、到着します。
水田の真ん中でアナウンス。
この景色から、もう、まもないのですか。
そうですか。

お昼過ぎに到着すると、まばらな人影。
結構大きい駅である、はずなんだけれどな。

夏、結構北に来たはずなのに、
日差し、ジリジリ。
太陽は、ここでも元気。さんさん。

美人の町らしい。
行きかう人が美人に見えて仕方ない。
よいよい。

用事があるので、しばし滞在。
と言っても、明日の夜、さらにさらに北へゆく。

2019年8月10日土曜日

草枕

夏目漱石、草枕。

「山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい。」

最近ずっと好きで、事あるごとに思い返しているのだけど
すごいなと、今更ながらに感心している。

世の中のいろいろな問題を考えるときに、
いつも、論理と感情を分けて考えている。

論理で考えている人と
感情で考えている人が
議論と言う名の口論をしている場面をよく見かける。

始まりの条件が違うのだ。
同じ人が考えても全く別の結論が出るだろう。

論理をルールに物事を考えると、得てして、とても辛辣な結論に達する。
論理はその刃で少しの人が傷つくことを、多くの人の福祉のために肯定する。
感情をルールに物事を考えると、綺麗な答えの後ろに、
たくさんの「気遣い、やさしさ」という無理が隠れる。
その無理の積み重ねによる悲劇を幾度も見聞きした。

全く難しいなと、思う。
そんな風に、いろいろと、ものを考えていると
ときに、とても強い信念を得て、大事にしたいと思ってしまう。
すると、その信念にそぐわない、いろいろに
強い反感を覚えて、許せなくなったりする。
進むことも戻ることも右左に折れることもできずに、
信念にがんじがらめにされてしまう。

もう、本当に難しいな。
そうして、こんな思考が頭をもたげるのは
旅をしている時が多い。

なるほどな、と思うのです。

「山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい。」

2019年8月3日土曜日

たゆたゆ

それなりに長い期間、身体で遊んでいる。
この歳になっても、やれることはあるようで
この歳になっても、できるようになることも
どうやらたくさんあるようで、面白い。

まあ、大した歳でもないのかもしれない。
それでも、最近は
これまで、できていたことが
ふと、できなくなって
なぜ、できなくなったのだろうと
数週間にわたって試行錯誤している。

きっとまたできるようになると信じている。
けど、ちょっと期間が長く、歳なのかなとも思った。

ずっと若い頃にも、
できたことができなくなって
たくさん苦労した思い出があるので
歳のせいでもないかなとも思う。

唯一、歳を感じるのは
そんな風に、足掻いている時に
冷静に原因をさがして
一つ一つ解決していこうとしている自分がいること。
がむしゃらでは、なくなった。

結構最近まで、こうやって重ねて、重ねて
いろいろやって、
詰まるところ、僕は何をしたいのだろうと
悩んでいた。

いまも、目的ははっきりはしていないけど
その悩みは減りつつあって、
なんとなく、これでいいんじゃないかな、と思っている。

別の悩みはまた増えているのだけれど。

ああ、まとまらない。
ビール片手に書いてるからかな。
お酒は、たゆたっていたいときに、ちょうどいい。

そんな日があってもいいだろう。
たゆたゆ。書いてみてかわいいから
この文章の名前にしてしまいました。
たゆたゆ。