2021年7月11日日曜日

日時計

小学生のころ,日時計を作る実験を授業でやった.
時間ごとに担当を決め,放課後に影を記録して時計を作る実験だった.
実験場所は学校の屋上.
画用紙の真ん中に杭を立てて置いておいた.
杭の影の先端に時間ごとにマジックで印をつけて,日時計を作る予定だった.

僕は友達と一緒に,確か16時で最後の担当だった.
「16時まで一緒に遊ぼーぜ」
家が学校から近いのをいいことに,学校ではなく,家のそばの広場で遊んでいた.
遊びまわっていた僕らは気がつくと夕方17時を過ぎていた.
いつもの,帰る時間まで気づかずに遊んでいた
そして,最後の最後に思い出した.
「どうしよう」

迷ったけれど,友達と一緒に学校に行った.
先生は,待っていてくれた.
恐る恐る職員室に現れた僕らを見て,静かに言った.
「記録を取りなさい」

屋上に着くと,夕暮れ.
画用紙を見ると,傾いた太陽で影が画用紙をはみ出し,記録が取れなかった.
僕らは,画用紙の端っこに印をつけた.
夕暮れで薄暗く,誰もいない学校は,いつもと違う場所のようだった.

翌日,順番に担当の人が何時にどの印をつけたかを発表した.
最後に僕らの順番.
「みんなに正直に報告しなさい」

そう言われて,時間に遅れてきちんと記録が取れなかったこと,
夕方になると,日が傾き,影が画用紙に収まっておらず
画用紙に残っている印は,杭の先端ではないことを報告した.

「時間に遅れたことは反省しなさい.でも,そのおかげで分かったことがあるね」
そう言って,太陽は東から西へ移動するだけでなく,高さも変わることを説明してくれた.

なぜか,一度も怒られなかった.そして最後に言われた.
「君たちは,来ないだろうと思っていた.遅れても,よく来たな」
不思議な気持ちだった.

今でも覚えている.なんとなくだけど,
あのとき僕たちは少しだけ「育った」のではないかと
思い返してそう感じている.