小学生のころ,日時計を作る実験を授業でやった.
時間ごとに担当を決め,放課後に影を記録して時計を作る実験だった.
実験場所は学校の屋上.
画用紙の真ん中に杭を立てて置いておいた.
杭の影の先端に時間ごとにマジックで印をつけて,日時計を作る予定だった.
僕は友達と一緒に,確か16時で最後の担当だった.
「16時まで一緒に遊ぼーぜ」
家が学校から近いのをいいことに,学校ではなく,家のそばの広場で遊んでいた.
遊びまわっていた僕らは気がつくと夕方17時を過ぎていた.
いつもの,帰る時間まで気づかずに遊んでいた
そして,最後の最後に思い出した.
「どうしよう」
迷ったけれど,友達と一緒に学校に行った.
先生は,待っていてくれた.
恐る恐る職員室に現れた僕らを見て,静かに言った.
「記録を取りなさい」
屋上に着くと,夕暮れ.
画用紙を見ると,傾いた太陽で影が画用紙をはみ出し,記録が取れなかった.
僕らは,画用紙の端っこに印をつけた.
夕暮れで薄暗く,誰もいない学校は,いつもと違う場所のようだった.
翌日,順番に担当の人が何時にどの印をつけたかを発表した.
最後に僕らの順番.
「みんなに正直に報告しなさい」
そう言われて,時間に遅れてきちんと記録が取れなかったこと,
夕方になると,日が傾き,影が画用紙に収まっておらず
画用紙に残っている印は,杭の先端ではないことを報告した.
「時間に遅れたことは反省しなさい.でも,そのおかげで分かったことがあるね」
そう言って,太陽は東から西へ移動するだけでなく,高さも変わることを説明してくれた.
なぜか,一度も怒られなかった.そして最後に言われた.
「君たちは,来ないだろうと思っていた.遅れても,よく来たな」
不思議な気持ちだった.
今でも覚えている.なんとなくだけど,
あのとき僕たちは少しだけ「育った」のではないかと
思い返してそう感じている.