2019年8月24日土曜日

つらぬく

美人の町に別れを告げて
りんごの町へ向かう。

りんごの町では一泊するだけで
すぐに、さらにさらに、北へゆく。

さすがは、りんごの町。
朝ごはんにでてきたりんごジュースが
おいしい。それはもう、おいしい。

りんごの町に早々に別れを告げて、北へ。
名のあるトンネルを通る。

車内で、観光案内。
このトンネルは全長53.8km、一番深いところでは海底240mを通ります。
40年の地質調査を経て、1988年に開通いたしました。

録音ではないのに。淀みない、綺麗な音のアナウンス。
きっと、車掌さんも、好きなんだな。

ちょっとだけ想像した。
トンネルがなかった時代のことを。
ここに、トンネルを通してやろうと志した人々のことを。
技術も、気力も、きっと全部ぶちこんで
海に、一本の長い穴を貫いた、その瞬間のことを。

昔にばっかり浪漫を感じるのは、僕の悪い癖だ。
まあ、僕だけでなく、どうやら人は、そういうものらしい。
トンネルそのものは、
うみの底に沈んでいることなど微塵も感じさせず
いたって普通のトンネルであった。

すごいことを、いたって普通と感じさせることが
一番すごいんだよな。

目的地は決まっているのだけれど、
道中は何も決めていない。
トンネルの先の駅で、1時間ほど待ちぼうけ。
観光案内のお姉さんに、尋ねる。
近くに何か見るものはありますか。
この辺りは、何もありません。
あらまあ。

仕方ないので、駅の外に出てみると
思いもよらない、ぼくの好きなものがあった。
そこには、何にもない、があった。

いえいえ、田んぼと畑がありました。
少し行くと、ふつうに馬がいました。
田んぼにたくさん人がいるなと思ったら
かかしでした。
大きな鳥がたくさん飛んでいるなと思ったら
かかしでした。

大いに楽しんで駅に戻る。
この旅はとても天気に恵まれているのだけれど
どうやら、ぼくの前後ろでは雨が降っているらしい。
とくに、前。

みどりの窓口で、お姉さんに教わります。
大雨で、電車、運休かもしれません。

あらあら、雲行きが怪しくなってまいりました。
ともかく、行けるところまで、ゆきましょう。