2020年8月16日日曜日

授業のエンタメ化

 今年は、授業をエンタメ化した。
オンラインなのをいいことに、フィルターを使って
女の子に
子供に
おっさんに(もともとおっさん)
なった。
他にも雑談で授業とは関係ない話をした。
オフィスアワーも開いて学生さんとなんでもないお話もした。
毎週の課題ではちょっとした大喜利のお題のようなものを出した。
一緒に集めた感想で、僕のおふざけは好意的に受け取ってもらえていることを知った。

ぜんぶ、オンラインだからやったことだ。
正直に言えば
僕は授業のエンタメ化には反対だ。
普段は雑談もしないし、変に仮装したりなんて、もちろんしない。
無駄に楽しませたりはしない。

遊んだ方が評判がきっと良くなるだろうとは思っていた。
実を言うと、授業を本当に初めてやっていた頃は、ちょっと工夫をしたりしていた。

そのうちに、気づいた。
これ、いらないんだ。
受け入れられないと言う意味ではない。
ただ、感じ取った空気があった。

僕が本当に伝えたいと思って、懸命に数学の話をすると、学生は聞く。
一生懸命、聞く。それがこちらに伝わるほどに、真剣に。
この本気の視線を感じ取ってからは、ふざけるのをやめた。
エンタメは、いらん。
実際、あまりにエンタメ化が過ぎると結局授業の内容が頭に残らないと言う研究も聞く。
楽しかった記憶のほうが残るからね。

学生には、小細工なしの本気の授業はちゃんと届く。
無駄話のような、小手先のテクニックは使わない。
それが、僕の決断だった。

そして、すべてがオンラインになった。
最初は、こだわりを大事にしていた。
けれど、途中で限界を感じた。

なにより、「何も返ってこない」。
そして、学生も、僕も家からほとんど出られない日々が続き、退屈していた。
じゃあ、仕方ない。
そう思って始めたエンタメ化は、とても楽しかった。
フィルターはすごいや。
雑談も、伝えたい「熱」はいつもあって、それを言葉にできてよかった。
全部を詰め込まないと、もたないと感じていたから、だいたい全部を使った。
立派にネタが切れてひいひい言っている頃に、前期が終わった。

楽しかったけれど、よかったら聞いてくれ。

本気で、命をかけて、真剣に「学ぶ」ことは、
その何倍も、何十倍も楽しい。

エンタメ化で本当の楽しさを覆い隠してしまって、申し訳ないと思っている。
早く、いつも通りが戻るといいなあ。