2018年3月3日土曜日

一人雪

雪の降る日に
旅に出た。


山中にある、名所に向かった。
なるほど、名所であって
人々が往き交う。

雪で滑る山道に苦労する人々。
どうやらぼくは
やっぱり道産子みたい
すいすいと登る。

頂上は本来
見晴らしがいいらしい
雪で何も見えない。

ま、ぼくは雪を見にきたのだから
いいのさ
と一人で勝手に満足。

登りで調子に乗ったぼくは
帰り道、見事に滑って転んだ。
ずいぶん久しぶりに
あんまりキレイに
すってんころりん
したものだから
こどものように、笑った。

駅に戻ると、電車は一時間後。
駅員さんにおすすめを聞くと
「なーんもねぇんだここは」
なぜかすごく嬉しそうだった。

「そういや、芭蕉の記念館があったな」

向かってみると吹雪いている。
ぼくの前には
かろうじて轍のおもかげ
足跡はひとつもない

「ま、冬だかんらやってねぇかもしれねぇけども」

なんとか、辿り着くと
やってた。

とびらを開けると
受付のお姉さんがあたふたあたふた。
そりゃ、誰もこないと思いますよね
そんな天気。

芭蕉の句がどうやら好きらしい
いいことを知った。

すべておき
当てなき坂を
一人雪

駄洒落である。
投稿俳句コーナーに置いておいた。

電車は一時間に一本だったので
ひとつ見送り、
芭蕉の句の中で雪を見ていた。

なんとか歩けるほどの吹雪
駅にもどる。

真っ白な視界に
二つ、目を光らせてやってくる電車は
なんだかとても
力強かった。

あぁ、そうそう。
数学。
歩いてるときは
半分くらいは考えている。
あとの半分は、まぁいろいろ。
こんな時に出会った数学は
この旅と一緒にあたまに残る。
それがとても楽しいのです。

一人雪。